退職社員から突然“未払い残業代”を請求された…

どう対応すべき?実際の企業事例から解説

「退職した元社員から残業代請求の通知書が届いた…」
「タイムカードもないし、どう反論すればいいのか分からない」


こうしたご相談は、年々増えています。

事例1

東京都内でサービス業を営むA社では、退職した社員から突然、弁護士名義で約180万円の未払い残業代請求が届きました。

A社には次のような状況がありました。
・タイムカードがなく出退勤は所定労働時間×出勤日数でテンプレ計算
・上長が承認していない“残業”が常態化
・就業規則は10年前から更新なし
・退職時の面談でトラブルは表面化していなかった

経営者は「そんなに残業させたつもりはない」と言うものの、証拠がないため反論材料も不足していました。

社労士としての分析

このケースでは、

“労働時間の把握義務違反”

“残業の運用整備不備”

“就業規則の整備不足”

の3つが重なった典型例でした。

どうしておけばよかった?

今回のケースでは、労働時間の把握を会社側がしていなかったことがトラブルの要因のひとつです。

【始業時間・終業時間が決まっているんだから、その時間で働いてるよね。】

【残業は指示してないし、勝手に働いた分の残業代は払う義務はないはずだ】

このような考え方には注意が必要です。憶測ではなく実態として把握しておかなければなりません。

まずは、会社としての方針や認識がはっきりしている場合は、就業規則に定めておくこと、そしてそれを労働者に対して周知をしておくことが重要です。

これらは基本的なことであり、重要なコミュニケーションのひとつとなります。

例えば、始業時間と終業時間を定めたうえで、

「始業時間より前に働いたり終業時間より後に働く必要がある場合は会社から指示をする場合があります」

「指示をしない場合は所定労働時間外に働かなくて大丈夫ですよ」

「指示がない場合でも業務上の都合で残業が必要な場合は申請をして上長の承認を得てくださいね」

このようなルールを決めて運用をしておくことが大切です。

日頃から社長や上司が直属の部下とコミュニケーションをとり、業務量や負担の割合について把握しておくことで、「そんなに残業してるとは思わなかった」ということは防げるのではないかと思います。

そして、残業の方法については就業規則に定めているから、といって残業申請や上長承認なしに残業している労働者がいた場合の残業代を払わなくていいというわけでもありません。

【残業をしているのは知っていたけど、指示はしてないし、勝手に本人がやっているだけと思って放置していた】という場合、実は労働者側としては、【残業なしでこの業務量を終わらせれるわけがない】【残業申請をしたら、なんでそんなことに時間がかかっているんだ?と言われるし、、、】【仕方ないからサービス残業するしかない】というような意見もよく耳にします。

むずかしいですよね。

仕事ができる上司は、仕事が遅い部下の気持ちになかなかなることが難しい場合も多く、【残業なんかしなくてもいいだろう】と思い、発言もそのようになってしまっていることがあるのですね。

「残業しないでね」といいつつも、している労働者がいる場合、それは【黙認している】と判断され残業代の請求を認めざるを得ない可能性もあるのです。

日々の運用のヒント

では、何でもかんでも残業を認めないといけないのか?というとそういうことでもありません。

残業の申請が来た場合、上司・会社としてはその業務がその日にどうしてもしなければならない業務であるかを判断し、承認する・しないを決定されるかと思います。

基本的には「事前申告・承認」で運用するのが望ましく、残業申請が毎日のように常態化してきている場合、考えるべきことがあります。

残業の原因となっている業務の量
・その人の負担割合

他の人は定時で帰れているのにその人だけが残業している場合

業務の取り組み方に問題があるのか
負担割合に問題があるのか

などを探り、改善に努めることが望ましいです。

全員が残業している場合

現状の人数ではさばききれない業務量で人手が不足している状態なのか

人手は不足しているけれど人件費に割く資金がない場合

無駄をなくし、業務改善をして業務効率を向上させる必要があるのか

などを探ります。

ほとんどの中小企業ではプレイングマネージャーが多い中、マネジメントだけに時間を割くのが難しいことは重々承知しておりますが、ミスコミュニケーションにより現場を放置していると、未払い残業代の請求が来てしまうかもしれません。

未払い残業を請求されてから、「在籍中には何も言ってこなかったのに!」と思われる経営者は多くおられますが、労働者としては、「気まずくなるので黙って退職したけど、やっぱりもらえるものはもらわないと!しっかり働いてきたし!」ということになってしまうこともあるのですね。

お問い合わせ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

【うちの就業規則で大丈夫かな?】

【残業の方法については詳しく決めれていなかったな】

【申請・承認制を導入したのはいいけれど、残業申請が来たら全部承認してしまっていて人件費がかなり上がってしまって困っている】

など、お悩みは様々かとおもいます。
就業規則の診断は無料ですので、お気軽にお問い合わせくださいね。

運用面でも初回ご相談は無料ですので、お力になれることがありましたら、ぜひご支援をさせていただければとおもいます。

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